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名古屋高等裁判所 昭和24年(控)183号 判決

被告人

足立昭子

主文

原判決を破棄して本件を名古屋簡易裁判所に差し戻す。

理由

被告人及び弁護人寺尾元実提出の控訴趣意は後記の通りであつてこれに対し檢察官は本件控訴はその理由がないものとして控訴棄却を求めた。

仍て先づ右弁護人提出の控訴趣意第一点について按ずるに原審判決書によれば原審は被告人は杉浦さかゑと共謀して昭和二十四年二月十三日午後七時過頃名古屋市千種区松軒町四丁目九番地湯屋業春日井敏郎方脱衣場において大島志き子所有の黑サージズボン外衣類等九点を竊取したものであつて同被告人は同二十三年三月十八日名古屋高等裁判所において竊盜罪により懲役一年(未決七十日通算)に処せられ右犯行当時その刑の執行を受け終つたとの事実を認定した上その証拠として被告人の原審公判廷における供述、被害者大島志き子提出の盜難被害届、檢察事務官作成の被告人に対する前科調書を挙示し右の事実に対し刑法第二百三十五條第五十六條第五十七條を適用したことが明かである然るところ原審公判調書によれば檢察事務官作成の被告人に対する前科調書については公判廷において適法に証拠調の手続を履践した旨の記載が存しないのでこれを証拠として事実認定に供することは訴訟手続に法令の違背があるものとせねばならぬ而して右前科調書を除外しては原審挙示の証拠によつて前示前科竝に受刑の時期を確認するに足らず從つて原審の累犯加重の適否を知るに由がないから結局右の違法は判決に影響を及ぼすこと明かであつてその余の控訴の趣意を逐一判断する迄もなく原判決は破棄を免れず且当裁判所において直に判決するに適せぬと認められるから刑事訴訟法第三百七十九條第三百九十七條に則つて主文の通り判決する。

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